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上場を目指すための「法務」「労務」「財務」

上場を目指すための「法務」

株式上場した場合、資金調達の多様化が図れ、二次的効果により、更なる会社の成長が期待できます。しかし、その一方で投資家保護の立場から「上場企業としての適格性」を問われることになります。言い換えればより高い「社会的責任を負う」ということです。

つまりプライベートカンパニーからパブリックカンパニーになることへの経営者の意識改革が、株式上場を目指す第一歩になります。その上で上場企業に相応しい社内管理体制を整備し、開示体制を確立することが必要です。そして、この上場準備作業をすることが経営体質の改善・強化の絶好の機会であると意識することが大切なことです。

株式上場する場合には、厳しい審査があり、その審査の基準には形式的審査と実質的な審査があります。しかし、この基準を満たしていても、上場前の募集株式の割当や株式移動の違法性、法令違反、係争・訴訟事件、反社会的勢力との関係等がある場合には上場申請の不受理または受理の取消となることもあります。

上記を踏まえた上で、具体的な「法務」関連の主な整備ポイントは下記になります。

1.社内管理体制

  • コーポレートガバナンス体制
  • 機関設計
  • 社内規定

等を一つ一つ関係法令と企業の実情を照らし合わせながら整備していくことが大切です。

2.株式事務の整備・運用状況

常に適法を意識しながら整備・運用することが大切です。

3.資本政策

  • 株主割当増資
  • 第三者割当増資
  • 株式分割
  • 株式移動
  • ストックオプション

等を常に関係法令に配慮しつつ、資金調達と株主構成のバランスを取りながら、適切な時期に効果的に実施する必要があります。

上記を一度間違った方法に整備、運用、実施してしまうと取り戻すことは大変ですし、時間も費用もかかります。初期の段階から正しい方向に整備、運用、実施していくことが早期の株式上場を可能にするポイントです。

                             IPO経営塾 司法書士 中村勧

(参考文献:株式公開ガイドブック(新日本監査法人))

上場を目指すための「労務」

上場を目指す場合に知っておきたい「労務」のポイントは下記のとおりです。

1.最低限のルールは守られていますか?

まず、上場を目指す前に足元から固める必要があります。今はインターネットに労働法の情報が満ち溢れています。社員は、日々ちょっとでも納得がいかないことがあれば、その不満は徐々に蓄積されていくのです。

また、そうした不満の相談先にも、労働基準監督署の総合労働相談コーナー、労働局における個別紛争処理制度、労働審判手続きをはじめとしてことかきません。それでもそうした相談の結果、紛争調整委員会によるあっせん等により和解できればいいほうです。もし万一こじれて裁判にでもなれば、あなたの会社の名前が○○株式会社事件として新聞沙汰にもなりかねないのです。

そうなれば他の条件がどんなに揃っていても、即上場準備がストップしてしまいます。労務リスクがそのまま上場阻害リスクとなりうるのです。

就業規則、賃金規程、時間外労働・休日労働に関する協定届等労働法に則り、トラブル防止、リスク回避を図らなければなりません。

2.一歩すすんだしくみにチャレンジできますか?

どういった人材を採用し、どう教育していくのか?そのための組織はどうするのか?そういったことを明確にしていくことによって、人材企業確保等支援助成金、育児・介護雇用安定等助成金他人材確保のための助成金や人材活用のしくみに対する助成金を活用することができます。

助成金をうけるためには、雇用保険への適正な加入、就業規則、労働者名簿、出勤簿、賃金台帳等の整備の他、人材計画や改善計画の提出等しくみの整備を前提とした準備が必要となります。

そうした整備を地道に行うことによって、同時に上場準備への道もひらけていくのです。

3.ヒトを活用したしくみができていますか?

最低限のルールができ、一歩すすんだしくみもできるとあとはヒトを活用できる人事賃金システムが必要となります。

何をすべきかが明確になった職責等級制度、新しい時代の新・実力給システム、人事制度に魂を入れる成績評価制度、精鋭の選抜育成に直結した昇格管理制度、精鋭を育て、業績を伸ばす人材開発制度等を整備することにより、健全経営が確立できます。

上場を目指すというととかく直前の審査内容や書類作成や制度のことばかりが話題となりますが、頂上を目指すにはぜひ裾野から目を向けていただきたいと願っております。

IPO経営塾 特定社会保険労務士 小森 達也

上場を目指すための「財務」

上場を目指す場合に知っておきたい「財務」のポイントは下記になります。

1.会計制度

本来どんな企業の会計も企業会計のルールに則ったものでなければなりませんが、現状未上場企業の場合は、それを簡便化した(税務計算のための)「税務会計」に傾きがちであります。上場企業にとって必要な「適正な財務会計」は、企業の財政状態や経営成績を外部利害関係者に適切に開示するものであり、税務会計とは異なってきます。例えば、金融商品の時価会計、資産の減損会計、税効果会計、引当金会計、連結会計といった利益に直結するものはもちろんのこと、また注記表、キャッシュ・フロー計算書、適時開示情報といった利害関係者が意思決定に必要な情報も適時適切に開示していく必要があります。

上場準備上は、適正な財務会計への移行が必要になります。上場に当たっては直前期2期間のからの監査証明が必要になりますので、そのときには正しい会計処理になっている必要があります。

実務上の留意点

税務会計から適正な財務会計に移行する場合、通常大きな修正(損失の計上)が見込まれます。この損失があまりにも大きい(数年の利益をつぶしてしまうほどの)と、上場の先延ばしはもちろんのこと、粉飾決算として過去の投資家から責任を問われる可能性もあります。よって、初期の段階から適正な財務会計を意図した決算を行っていくことが、上場への早道です。

また私のサポートの経験からも「会計の質的レベルと企業業績は比例する」が定説であります。金融機関対策等といっての安易な粉飾決算も見受けられますが、「一度踏み外した会計レベル(= 経営者資質)はなかなか正常に戻らない」は、最近の大手企業の粉飾事例を見ても明らかであります。初期の段階から会計に真摯に取り組む姿勢こそ、上場への必須行動なのであります。

2.利益管理制度

外部投資家が望む企業情報は、今後どれだけ継続的に収益を上げ続けてもらえるか、であり、上場において利益管理制度がしっかり機能していることが必要になります。利益管理制度は次の3つに区分されます。

A) 中長期利益計画 ・・・3〜5年
B) 単年度利益計画(年度予算) ・・・1年
C) 月次予算 ・・・1ヶ月

いずれも計画と実績との乖離が適正に分析され、その後必要な対策を講じることで実績(結果)が伴ってくる(利益計画通りに推移する)ことが大事になります。

利益管理を適切に行うためには、月次決算のスピードと正確性がポイントになります。正確性については月次引当計上・月次概算在庫計上等を行い本決算に向けての適正な会計情報となる必要があり、一方スピードについては月次決算の確定値が翌月の10日くらいに報告できることを目安とします。

実務上の留意点

「本物の経営」

  1. トップが社長の仕事をする(リーダーシップの発揮、戦略の発掘・明示)
  2. 戦略が組織全体に浸透している(価値の共有)
  3. マネジメントの徹底(決めたことをきちんとこなす)

の実践は、利益管理制度が実践できてこそ行えるものであります。利益管理体制不十分にも関わらず、たまたま利益を計上できている企業もありますが、偶然な利益(=未熟な経営から生まれた利益)には将来性はなく、上場準備の段階で必ずつまずきます。よって、初期段階から利益管理制度の導入を行い、強い企業体質(=社風、強み)を構築することこそ、上場への道なのであります。月次決算早期化もあわせて、初期の段階だからこそ、取引が簡単なうちに導入してしまうことがお勧めです。

IPO経営塾 桑澤 克実

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